障害福祉サービス事業所にとって、職員の処遇改善は喫緊の課題です。2024年度の報酬改定では、これまでの処遇改善加算が一本化され、加算率の引き上げや事務負担の軽減など、より活用しやすい制度になります。本記事では、2024年度の処遇改善加算について、制度の概要や算定要件、具体的な取り組み方を解説。計画的な準備を進め、加算を最大限に活用するためのポイントをお伝えします。

2024年度の処遇改善加算、一本化と加算率アップがポイント

2024年6月から、「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」の3つの加算が一本化され、「福祉・介護職員等処遇改善加算」になります。新加算では、これまでのⅠ~Ⅲ区分がⅠ~Ⅳ区分に再編され、加算率も引き上げられます。 例えば、生活介護事業所の場合、新加算Ⅰの加算率は8.1%、新加算Ⅱは8.0%となり、現行の加算よりも大幅にアップします。この加算率引き上げにより、2024年度は2.5%、2025年度は2.0%のベースアップを実現することを目指しています。 一方で、新加算への移行に向けてクリアすべき算定要件もあります。月額賃金改善要件やキャリアパス要件、職場環境等要件を満たす必要がありますが、2024年度中は経過措置が設けられ、計画的な対応が可能です。

新加算の算定要件をチェック!計画的な準備がカギ

新加算の算定要件は、①キャリアパス要件、②月額賃金改善要件、③職場環境等要件の3つです。 キャリアパス要件では、福祉・介護職員の任用要件や賃金体系の整備、研修の実施、昇給の仕組みづくりなどが求められます。月額賃金改善要件では、新加算Ⅳの場合、加算額の1/2以上を月給の改善に充てることが必要です。 これらの要件を満たすには一定の準備期間が必要ですが、2024年度中は経過措置として、年度内の対応を誓約することで算定が可能です。各事業所の実情に合わせて、計画的に取り組んでいきましょう。 特に、キャリアパス要件Ⅰ~Ⅲや月額賃金改善要件Ⅰは、加算を算定する全ての事業所に関係する重要な要件です。まずはこれらの要件への対応を優先的に進めることがポイントといえます。

職種間の配分ルールも柔軟化!より使いやすく

処遇改善加算による賃金改善は、これまで福祉・介護職員を中心に配分することが基本とされてきました。しかし、新加算では職種間の配分ルールが柔軟化され、福祉・介護職員以外の職種にも配分できるようになります。 これにより、事業所の実情に合わせて、柔軟に加算を活用することが可能になります。例えば、リハビリ専門職など他の専門職の処遇改善に充てることも選択肢の一つです。各事業所で、職員のモチベーション向上やサービスの質の向上につながる配分を検討しましょう。

賃上げ促進税制の活用もおすすめ

処遇改善加算の活用と合わせて、賃上げ促進税制の活用もおすすめです。これは、事業者が職員の賃上げを実施した場合、賃上げ額の一部を法人税から控除できる制度です。 大企業・中堅企業は賃上げ額の最大35%、中小企業は最大45%を控除可能。処遇改善加算と組み合わせることで、より効果的に職員の賃金改善を図ることができます。 また、処遇改善加算は2024年度と2025年度の2年間の加算額が措置されており、2024年度の加算の一部を前倒しで賃上げに充てることも認められています。2年間を見据えた計画的な活用を検討しましょう。

処遇改善加算の活用で職員の定着とサービスの質向上を

処遇改善加算の目的は、職員の賃金改善と職場環境の改善を通じて、人材の確保・定着を図り、サービスの質を向上させることにあります。単なる賃金アップだけでなく、キャリアアップの仕組みづくりや働きやすい環境整備など、総合的な取り組みが求められます。 加算の要件をクリアするためには、一定の事務負担は避けられません。しかし、職員の処遇改善は事業所の持続的な運営に欠かせない重要な投資です。 2024年度の制度改正を機に、処遇改善加算を有効に活用し、魅力ある職場づくりを進めていきましょう。職員の満足度とモチベーションが向上し、サービスの質の向上につながることが期待できます。 各事業所の皆さまには、ぜひ計画的な準備を進めていただき、新しい処遇改善加算を最大限に活用していただきたいと思います。